図案のパクりはだめ
刺しゅうをお仕事に
2025.10.20

先日、とある先生の図案が無断使用されたという話を聞きました。(その先生は本当に熱血で優しい先生で、多くの生徒さんから慕われており、こういう話は先生を守りたい生徒さんの間で一瞬で広まります。)
東京都の某自治体系カルチャーセンターの講座案内に、その先生の作品とまったく同じ作品の写真が掲載されていたのが発端です。私も画像を確認しましたが、完全一致。
その後、通報を受けて画像は差し替えられたものの、差し替えられた画像は大御所先生の作品と酷似というか葉っぱの枚数以外同じ……
え? そんなことある? と、ただただ驚きました。
しかも、個人教室ではなく某自治体が運営する施設での出来事です。
昨年からクレームが入っていたにもかかわらず、その指摘をずっと無視して同じ講座を複数回開催していたと聞き、閉口しました。
さらに担当者は、講師から「この図案は10年ほど前に特許庁で著作権を取得しており、私が権利者だ」と説明され、それを信じてしまったそうです。
被害に遭われた先生は長らく心を痛めておられたそうですが、人格者でもあるのでじっと耐えていたのだと思います。
ここは大事な点ですが、著作権は創作と同時に自動で発生する権利で、特許庁で“取得”するものではありません。文化系のカルチャーセンターの担当者は、そのくらいの知識は持ち合わせて欲しいです。。
以下、スレッズで教えていただいたことですが、作品を守るためにできること⇩
- 作品や図案を描いた場合は、日付を入れておく。SNSに載せた公開日でも、とにかく日付が分かれば自分が先に作品を作ったことを主張できるそう。
- 文化庁の「著作権登録制度」を使う。ただこれは1件につき3,000円くらい費用がかかるのであまり現実的ではないかも?
「刺しゅうをする人に変な人はいない」と、長らく思ってきました。
でも現実として、図案の無断使用や出典ぼかしは起きています。悲しいけれど、性善説で構えていることはできませんので、私は来年の作品展を招待制にすることにしました。(これだけが原因ではないけど)
私は会場内での写真撮影をOKにしているので、作品が集まる場に、意図的に図案やアイディアを盗みに来る人もいると感じました。招待制にしたら来場者数は減るだろうけど、参加者の方も私も楽しく作品展を終えるためには仕方ないことです。
カルチャーセンターは講師の人数も多いだろうし、悪い人の方が稀だろうし、いちいち図案の出典まで確認できないかもしれませんが、やはり講師業をする人のSNSを確認することくらいは必要ではないでしょうか??
オリジナルの作品がない人は、SNSには載せられないでしょう。この時代、講師や作家活動をしたい人がSNSをやっていない、なんてことはありえないです。無名の人でSNSの投稿がゼロ、鍵アカウントの場合は要注意じゃないかと思います。SNSで自分の作品や活動を公開することは、いわば信用の担保。
白糸刺しゅうの世界は狭いので、この図案はこの先生のだ!ってわかる人はすぐわかります。なので、安易に誰かの図案を使わない方が自分のためです。一度でも「それ、あの先生のでは?」となってしまうと、信頼の回復はとても大変。というか、信頼の回復は無理でしょう。
アンティーク図案も扱いは慎重に。アンティークの図案は使用OK、と言っている刺しゅうの先生もいらっしゃるようですが、「アンティーク=自由に使える」ではない場面があります。
たとえば、著作権の存続期間がまだ残っていたり、本や図案集の編集著作権、撮影画像の権利、所蔵先の利用条件が絡むことも。原本がパブリックドメインでも、複製物や編集物には別の権利が生まれることがあります。
参考にさせてもらうときは出典の記載とアレンジの明確化、無断配布はしない、この3つをまず大切にしていきたいです。
アンティーク図案を使う時に気をつけることをChat gpt5に聞いてみました。以下、ご参考まで。
権利状況の確認
- 原著作者名と没年を特定(国や版によって保護期間が異なる)。
- 出典が原本/復刻版/図案集/Web画像のどれかを明確化。
- 付随権利の有無を確認:編集著作権(図案集の編集・レイアウト)/写真の著作権/所蔵館の利用規約。
- 商用利用可否・クレジット要件の記載がないかチェック。
利用条件の線引き
- トレースやコピー販売はしない(教材PDFへの貼り込み・再配布も不可)。
- 参考に留め、自分の線で構図・比率・モチーフ配置・針運びを再設計して“別作品”にする。
- 教室や販売で使う場合は、出典・利用条件に反しないかを再確認(不明なら所蔵先や出版社へ問い合わせ)。
表記と証跡の整備
- 作品ページや説明欄に出典表記を明記。表記例:「図案の着想:DMC図案集(19xx年)より参照/本作は再構成・再描画したオリジナルです」
- 参照元の書誌情報・URL・規約スクショを保存(問い合わせメールの控えも保管)。
- グレーなら別案を起こす(信用最優先)。
そもそも、刺しゅうを教えたり販売をするのであれば、図案くらいオリジナルで作れないと…と私は思います。。白糸刺しゅうはゼロから図案を起こすわけではないので、図案を起こすこと自体はそんなに難しいことではないですし。
図案を自分で作ってみれば、図案を描いてから試し刺しをしてステッチを決めて本番の作品を作ることがどれだけ大変なことかわかると思います。
作る人・教える人・場を提供する人、全員が最低限の知識を持っておかないとダメだなと強く感じた出来事でした。
昨年、弁護士の先生をお招きして「手芸にまつわる法律」セミナーを主催し、100名近くの方にご参加いただきました。
人の権利を侵害せず、安心して刺しゅうを楽しみたいと思う方は確実に増えています。
一方で、よくない行為はすぐ共有され、信頼を損ないます。
悪意の有無にかかわらず、ダメなものはダメ。私自身も基本を見直しながら、誠実な刺しゅう活動を続けていきます。
クラフトの世界が、安心して楽しめる場所であり続けますように。
刺しゅうする人は全員いい人って思いたい!
*冒頭の被害に遭われた先生は私も大好きなお世話になっている先生で、本ブログ記事も先生にご一読いただき、許可をいただいて掲載しています。